典拠1:知念盛俊(1979年) 「尖閣列島の陸産貝類」沖縄生物学会誌-第17巻19-27頁
典拠2:CiNii - 知念盛俊, 1979, 尖閣列島の陸産貝類, 沖縄生物学会誌, 17, 19-27, pls.1-3
記事: 琉球大学の安部琢哉博士によって採集された陸貝の報告で、過去七氏による採集品と合
わせ、尖閣から11科17属19種がリストされている。タカラノミギセル、センカクコギセ
ル、マサキベッコウの生殖器が初めて報告されたほか、タダマイマイ、アツマイマイ等の生殖器
も報告されている。タカラノミギセルの閉弁の形態が記録されているのは類縁関係考察の上から
も貴重である。ミジンマイマイは沖縄新産。魚釣島・黄尾島産のゴマガイ(新種候補)は記載が
望まれる。」
典拠3:改訂版 レッドデータおきなわ−動物編− 貝類 陸産貝類
http://www3.pref.okinawa.jp/site/contents/attach/9962/kairui.pdf
和名: マサキベッコウ
分類: 有肺目ベッコウマイマイ科
学名: Bekkochlamys masakii(Kuroda, 1960)
方言名: なし
カテゴリー: 絶滅危惧類(VU) 環境省カテゴリー: 情報不足(DD)
形態: 貝殻はこの科としては大型(殻径約15mm)で、殻高は低く(約7.5mm)、円盤形で、
螺層数は多く、最終層は急激に広くならない。螺塔は僅かに突出し、螺層の膨らみは弱い。体層
の膨らみも弱く、周縁には角を持たない。縫合は窪まない。殻表はほぼ平滑で、明瞭な螺状脈を
持たず、やや褐色がかった黄色で、光沢を持つ。臍孔は軸唇によって被われ、この部分は白色と
なる。
近似種との区別: 本種は、タイワンベッコウ B.”formosanusとは殻表に明瞭な螺状脈を持たな
いことによって、ベッコウマイマイB. perfragilisとは最終層は急激に広くならず、黄褐色で、
臍孔部が白色になることで識別できる。
分布の概要: 石垣島・西表島・与那国島・尖閣諸島から知られている。
近縁な種及び群との分布状況の比較: タイワンベッコウは台湾に、ベッコウマイマイは奄美・沖
縄両諸島に分布する。
生態的特徴: 森林の倒木下に生息する地上性種である。
生息地の条件: やや自然度の高い森林に生息する。
個体数の動向: 個体群密度は極めて低い。
現在の生息状況: 石垣島・西表島では、個体数は比較的少なく、与那国島でも1970年代前半
の調査では確認されていない。尖閣列島の魚釣島では比較的高密度であったが、この島では野生
化したヤギによる植生破壊が進行中である。
学術的意義・評価: 八重山諸島と尖閣列島の固有種である。
生存に対する脅威: 森林の伐採や野生化したヤギによる生息環境の変化。
特記事項: 特になし。
原記載: 黒田徳米,1960.沖縄群島産貝類目録(頭足類を除く).琉球大学教務部普及課,
沖縄,iv+1―104pp.
参考文献: 黒田徳米,1963.日本非海産貝類目録.日本貝類学会,東京,vi+71pp.
波部忠重・知念盛俊,1974.八重山群島石垣・西表両島の陸産貝類相とその生物地理学的意
義.国立科学博物館専報,(7):121―128,3pls.
知念盛俊,1976.陸産貝類.“生態写真集沖縄の生物”,新星図書,沖縄,212―24
3.
知念盛俊,1990.西表島の陸産貝類.“平成元年度西表島崎山半島地域調査報告書”,環境
庁自然保護局,東京,267―275.
執筆者名: 黒住耐二
典拠4:「沖縄の秘境を探る」高良鉄夫著・沖縄新報社、76頁、第二章南小島と魚釣島の生物
たち【物騒なクモの巣小屋】
尖閣列島の陸産貝は、種類は少ないが、珍奇なものがあって、しかも各島に著しい別型を産す
るので興味深い。
その他、珍種として、以前に発見されたアツマイマイ、タダマイマイ(昭和十四年多田氏発
見)やマサキベッコウマイマイ(昭和十四年正木氏発見)などがある。今後十分に調査すると珍
品の出る可能性がある。
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